トウモロコシに見るアメリカ

アメリカでは1970年代の農業政策の転換によって、それまでの減産補助金支給政策を一転して増産補助金補助金支給政策とした。
その結果アメリカでは様々の農産物が大量にが生産されるようになった。トウモロコシはそのひとつである。
トウモロコシは面積当たりの収量を増加させるように改良され、労働集約、設備集約が進行して農業の工業化が行われた。

現在では1エーカー(約36m四方)当たり5t近くのトウモロコシを生産している。

そして、トウモロコシはさまざまなものに加工される。その一つ一つがトウモロコシの生産を加速させているのだ。近年ではバイオエタノールもその例の一つだろう。
その様は余剰するトウモロコシが亡霊のごとく、加工される対象、むさぼり食う対象を探し求めているようだ。

こうして大量に生産された安価なトウモロコシは人々の食費をどんどん低下させた。現在アメリカでは収入に占める食費の割合の平均は7%-9%ほどとなっている。日本では約20%であるからその差は歴然である。
その分可処分所得が増大する。その金はさらなる消費へと回され、今のアメリカの繁栄は裏付けられているのだ。アメリカ人はトウモロコシによって飼われていると言っても過言ではない。


しかし、アメリカで生産されるトウモロコシの大半はとてもそのまま食べられたものではない。高収量=面積当たりのトウモロコシ生産を増やすことではない。高収量=生産カロリーを増加させるということなのだ。カロリーを増大させるということはトウモロコシが本来有するタンパク質の喪失ということにもつながり、栄養価はほとんどないに等しい。単純にカロリーを摂取するだけの物質になり下がった。

さらには1970年代に急速に普及した高果糖コーンシロップは瞬く間にグラニュー糖に置き換わり、現在ではアメリカ人が摂取する糖分の80%近くが高果糖コーンシロップによって摂取される。
この30年間で糖類の摂取は30%増大したが、グラニュー糖の消費量は半分以下になったことからもどれほどに普及したかがわかるだろう。

生産されたトウモロコシは牛の"生産"にも用いられ、高果糖コーンシロップとして生成される。牛は本来トウモロコシを食べて育つようにはなっていない。そのままトウモロコシを食べていると、胃の内部のphが酸性に傾き病気になってしまう。
病気にならないように飼料には大量の薬が投与される。
牛は薬漬けの状態で出荷される。


ここで黄色いMのマークのショップを思い浮かべてみてほしい。
牛はトウモロコシで育ち、ポテトはコーン油で揚げられ、コーラは高果糖コーンシロップでできている。
恐ろしい話だ。


近年、アメリカ人の肥満率は31%と言われている。安い食品が満ち溢れ、豊かなように見える世界は本当に豊かなのだろうか?

彼らにとって食の喜びとは何なのだろうか?

人の肥大、欲望の肥大の先には何があるのか?




しかし、トウモロコシをめぐる既得権益は恐ろしく強大であることも付記しておかなくてはいけない。

日本の食料自給率は41%と言われているが、この食料自給率はカロリーベースで語られている。日本の農業は栄養のある作物を作っているだけまだましなのかもしれない…